
銀太の「待て」が完成しない。
完成しない、というのは正確な表現ではないかもしれない。
「待て」を言えばいちおう止まる。
止まるのだが、3秒以内に動き始める。
「待て」が終わったのか終わっていないのか、それは銀太が決めている。
わたしが「よし」と言う前に動いている。
これはいったい何なのか。なぜ銀太は待てないのか。
今日はそれを本気で考えてみたいと思う。
銀太の「待て」の実態
まず現状を正確に報告しておく。
銀太に「待て」と言うと、止まる。これは本当だ。
完全に無視しているわけではない。「待て」という言葉は認識している。
問題はその後だ。
止まった銀太は、わたしの顔を見る。「待て」と言われたことはわかっている
でも目に「で、いつ終わるの?」と書いてある。
わたしが「よし」を言う前に、銀太の中で独自のカウントダウンが始まっている。
3秒。2秒。1秒。
動く。
わたしが「よし」と言おうとした瞬間にはもう動いている。
「よし」を先取りしている。
わたしの「よし」は銀太の「動く」の後追いになっている。
主導権が完全に逆転している。
なぜ待てないのか、仮説①「待つ意味がわからない」
最初に考えた仮説は、「待て」の意味が理解できていないのではないか、というものだ。
でもこれはすぐに否定された。
銀太はごはんの前に「待て」と言うと、食器の前で止まる。
食べたくて仕方がないはずなのに、止まる。
このとき銀太の「待て」の精度は驚くほど高い。1分でも待つことがある。
つまり「待て」の意味はわかっている。
ごはんのためなら待てる。ごはん以外のときは待たない。
これは理解力の問題ではなく、モチベーションの問題だということになる。
なぜ待てないのか、仮説②「待つ理由がない」
次の仮説。
銀太にとって、散歩中や普段の「待て」には、待つ理由が見当たらないのではないか。
ごはんの「待て」は待てば食べられる。明確な報酬がある。
散歩中の「待て」は、待っても何も起きない。
待った結果として何かが起きるわけではない。
銀太の視点に立てば「なぜ止まらなければならないのか」という疑問が生まれても不思議ではない。
これは柴犬の「合理性」だと思う。
柴犬は理由なく従わない、と聞いたことがある。
なぜそうするのかがわからないと、動かない。
逆に言えば、なぜそうするかが腑に落ちると、ちゃんと従う。
銀太の「待て」が完成しないのは、もしかしたら「待つ理由をわたしがちゃんと伝えられていないから」なのかもしれない。
なぜ待てないのか、仮説③「待つことが性格的に向いていない」
三つ目の仮説。
これが一番有力だと思っている。
柴犬は独立心が強い犬種だ。自分の意思で動きたい。
指示に従うことよりも、自分が正しいと思った行動をとることを優先する傾向がある。
「待て」という指示は、柴犬の気質と根本的に相性が悪いのかもしれない。
考えてみれば、「待て」ほど自分の意思を封じ込めるコマンドはない。
「お座り」「伏せ」は体の形を変えるだけだ。
でも「待て」は「動きたい気持ちを我慢しろ」という指示だ。
銀太にとって、それは相当な負荷なのかもしれない。
ごはんのためならその負荷に耐えられる。
でもそれ以外の場面では、負荷に見合う報酬がない。
だから3秒で限界が来る。
考察のまとめ、そして結論

三つの仮説を整理すると、こうなる。
- 仮説①:「待て」の意味はわかっている→否定
- 仮説②:待つ理由・報酬がないと待てない→有力
- 仮説③:柴犬の気質的に自分の意思を抑えることが苦手→最有力
つまり銀太が「待て」を完成させないのは、頭が悪いからでも、わたしをなめているからでもない。
「待つ理由が自分の中でまだ腑に落ちていないから」だと思う。
これはわたしの伝え方の問題でもある。
待った結果として何が起きるのかを、もっと明確にしていく必要がある。
おやつを使う・褒めるタイミングを変える・待つ時間を短くするところから始める。
……と、ここまで真剣に考えてきたが、結局のところ、銀太はこんなことを一切考えていないと思う。
ただ単に、動きたかっただけかもしれない。
まとめに代えて
今日も銀太の「待て」は完成しなかった。
3秒待って、動いた。わたしが「よし」と言う前に動いた。
でも、3秒前より少しだけ長くなってきている気がしないでもない。ほんの少しだけ。
完成は遠い。でも、少しずつ何かが積み上がっている気がする。
それでいい。焦らず、銀太のペースで。
……と言いながら、明日もきっと3秒で動き出すんだろうな。
🐾 柴犬・銀太の日常は、Xでも毎日発信中!柴犬あるある四コマ漫画もお楽しみいただけます。