コラム-しっぽの向くまま

銀太に完敗した日のこと|柴犬に意志の力で負けた飼い主の告白

負けた。

完全に、完璧に、言い訳の余地なく、負けた。

相手は銀太だ。体重8kg、前足の力で引き戸を開けられる柴犬だ。

わたしは体重70kg超、一応社会人として仕事をこなしている大人だ。それでも負けた。

今日はその告白をしたいと思う。

敗北① ソファに乗せない作戦、3日で崩壊

銀太を迎えた最初のころ、「ソファには乗せない」というルールを決めた。

衛生的な理由と、習慣にしたくないという理由だ。妻も同意した。

家族の方針として決まった。完璧な作戦だった。

1日目。銀太がソファに前足をかけた。「ダメ」と言った。銀太は降りた。

2日目。銀太がソファに乗った。「ダメ」と言った。銀太は降りた。でも目が「なぜ?」と言っていた。

3日目。わたしが仕事から帰ってくると、銀太がソファでくつろいでいた。妻が「まあいいかと思って」と言った。

その後わたしも「まあいいか」と思った。

現在、銀太はソファの定位置を持っている。

敗北② ごはんのおねだりに屈した件

「人間の食事中に食べ物を与えない」というルールも決めていた。

これも理由は明確だ。癖になる・肥満につながる・しつけ上よくない。

どれも正しい。わたしは正しいことを知っていた。

ある休日の昼ごはん。わたしが鶏肉を食べていると、銀太がやってきた。

何も言わない。ただ座って、わたしを見ている。

目が「ある?」と言っている。

わたしは「ダメだよ」と言いながら鶏肉を食べ続けた。

銀太は動かない。5分経った。10分経った。銀太はずっとそこにいた。

わたしは小さく切った鶏肉を、銀太の食器に入れた。

「食器に入れたから与えたわけじゃない」と自分に言い聞かせながら。

敗北③ 散歩ルートを決めているのは銀太だった

散歩のルートは飼い主が決めるものだと思っていた。

リードを持っているのはわたしだ。

どこへ行くかはわたしが決める。そのはずだった。

気づいたのはある朝のことだ。

いつもと同じ時間に出発して、気づいたらいつもと同じルートを歩いていた。

試しに違う道に誘導しようとした。銀太は断固として動かなかった。

4本足を踏ん張って、岩のようになった。

わたしは5分格闘したあと、いつものルートに戻った。

翌日も同じことが起きた。翌々日も。

現在、散歩のルートは銀太が決めている。

わたしはリードを持って後ろからついていくだけだ。

敗北④ 深夜のぐずりに白旗を揚げた夜

銀太を迎えた最初の2週間、「夜鳴きしても構わない」という方針を持っていた。

構ってしまうと習慣になる。それは正しい知識だ。

わたしは正しいことを知っていた。

夜中の2時、銀太が鳴いた。

わたしは布団の中でじっとしていた。

鳴き声は続く。3分経った。5分経った。

わたしは起き上がって、ケージのそばに毛布を持ってきて、床に寝た。

「構ったわけじゃない。そばにいるだけだ」と自分に言い聞かせながら。

翌朝、首が痛かった。銀太はぐっすり寝ていた。

まとめに代えて

告白は以上だ。

ソファ、食べ物、散歩ルート、夜鳴き。どれも「負けてはいけない」とわかっていて、それでも負けた。

なぜ負けるのか、考えてみた。

たぶん、負けてもそんなに困らないからだと思う。

ソファに乗られても生活できる。鶏肉を少し分けても問題ない。

銀太のルートで散歩しても楽しい。夜床で寝ても、翌日ちゃんと起きられる。

困らないから、負ける。負けても笑っていられる。

そういう関係を、銀太と築いてしまったのかもしれない。

これを「完敗」と呼ぶのかどうか、最近少し迷っている。

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