
※ 今回のコラムは、しばごろうの妻が書きました。いつもと少し違う目線で、銀太のことをお届けします。
銀太はツンとしている。
これは断言できる。
呼んでも来ない。撫でようとすると体を引く。抱っこしようとすると全力で回避する。
わたしが近づくと、さりげなく1メートル離れた場所に移動する。
なのに、わたしが別のことをしていると、いつの間にかそばに来ている。
これはいったい何なのか。柴犬を飼って数年、わたしはずっとこの謎と向き合ってきた。
今日はこれを本気で考えてみたいと思う。
ツンとしている証拠、集めてみた
まず事実を整理しておく。
わたしが銀太に対してツンとされた事例を、記憶の限り書き出してみた。
事例①:呼んでも来ない
「銀太、おいで」と言っても、銀太は動かない。
耳がわずかに動くので、聞こえていることはわかる。
聞こえているのに来ない。
これをツンと呼ばずして何と呼ぶのか。
事例②:撫でようとすると逃げる
わたしが手を伸ばすと、銀太はさっと体を引く。
決してパニックになっているわけではなく、ただ冷静に、静かに、一歩引く。
その落ち着き方が逆に腹立たしい。
事例③:目が合うと視線をそらす
わたしが銀太を見つめると、銀太はしばらくしてから静かに視線をそらす。
「見てたけど、見てなかったことにしてあげる」みたいな態度に見える。
事例④:夫には割と寄っていく
これが一番納得いかない点だ。
夫が帰ってくると、銀太は玄関まで出迎えに行くこともある。
わたしが帰っても、銀太はたいてい自分の場所にいる。
夫と何かが違うのか。わたしの何かが足りないのか。
でも、来るときがある

ここで一つ、重要な事実を書き加えておく必要がある。
銀太は来るのだ。ちゃんと、来る。
ただし条件がある。
わたしが別のことをしているとき。
本を読んでいるとき、気づいたら足元にいる。
作業に集中しているとき、いつの間にかソファの横に来ている。
ぼんやりしているとき、気配を感じて振り向くと、1メートル先に銀太がいる。
呼んでいないときに来て、呼んでいるときに来ない。
これはいったい何の意地なのか。
でも、不思議とこれが嫌いじゃない。
ツンとしている理由、考えてみた
少し調べて、少し考えてみた結果、いくつかの仮説が浮かんだ。
仮説① 自立心が強いから
柴犬はもともと猟犬として、人間と一定の距離を保ちながら働いてきた犬種だという。
ベタベタと甘えるのではなく、必要なときだけ人間と協力する。
そういう気質が今も残っているのかもしれない。
つまり銀太がツンとしているのは、「信頼していないから」ではなく「自立しているから」という可能性がある。
仮説② 主導権を持ちたいから
犬は本来、自分のペースで物事を決めたい生き物らしい。
「呼ばれたから行く」ではなく「自分が行きたいから行く」という感覚で動いている。
だとすると、わたしが呼んでいるときに来ないのは「反抗」ではなく「意思表示」なのかもしれない。
来るかどうかは、銀太が決める。それだけのことなのかもしれない。
仮説③ 実はちゃんと見ている
これが最も有力な仮説だと思っている。
銀太はツンとしているように見えて、実はわたしのことをよく見ている。
わたしが落ち込んでいるときにそばに来ること、わたしが集中しているときにそっと近づいてくること。
それは、ちゃんとわたしを観察しているからこそできることだ。
ツンとしているのではなく、見ているのだ。
「ツン」は愛情表現なのかもしれない
ここまで考えてきて、少し思うことがある。
人間の愛情表現は、たいてい「近づく」方向だ。
抱きしめる、触れる、言葉をかける。
でも銀太の愛情表現は、どうやら「そこにいる」という形らしい。
抱きしめることはしない。
でもそばにいる。触れてこない。でも離れない。
呼んでも来ない。でも気づいたらいる。
これはもしかしたら、銀太なりの「わたしのそばにいたい」という気持ちの表し方なのかもしれない。
口には出さないし、しっぽを振って飛びついてもこない。
でも確かに、そこにいる。
そう考えると、あのツン顔が少しだけ違って見えてくる。
まとめに代えて
今日も銀太はツンとしている。
呼んでも来なかったし、撫でようとしたら1メートル離れた。
でも今、わたしがこれを書いているとなりで、銀太はそっと座っている。
来てほしいときには来ない。
でも気づいたらそこにいる。
銀太のツンの正体は、たぶん「自立と愛情が同居したもの」なんだと思う。
近づきすぎない。でも離れない。
それが銀太という存在なんだと、今日もなんとなく納得している。
ツンとしていていい。その代わり、そこにいてくれれば。
(このコラムは、しばごろうの妻が書きました。今日も銀太の気持ちはよくわかりません。でもそれが、最近少し好きになってきました。)
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